第18回 2003年7月24日 那智勝浦 天気晴れ 波うねりあり

前日は、雨、今日も、朝まで雨。
宇久井の港に向かう頃には、雨はあがり、夏の太陽が戻ってきました。
三日前、ときどき、ひどい雨にうたれながらも、船は出港し、そしてマッコウに出逢っています。
あのときは、てっきり欠航だと思い込んで、みすみすマッコウに出逢えるチャンスをなくしてしまいました。

さて、今日。
夏休み、平日にも子どもの姿を見るようになりました。
今日の船長は東さん。東さんともうひとりのスタッフ。
米川さんに研修に来ている青年を紹介してもらいました。

米川船長:「ちょっと、この子(研修生)は甘やかし過ぎたね」
東船長:「もっと厳しくせないかんね」
米川船長:「ロープにくくりつけてサメが来たら海に放り込んだらないかんね」

司馬遼太郎さんが、「紀伊の漁師」は腕が良いと何かの本に書いてました。
良い腕には、厳しい修行がかかせないんでしょうか。
とはいえ、これは冗談ですが。

今日はもう一人、新しい人。
この人は紀伊民報の取材記者。
マッコウが見れた日に寝過ごしてしまって、
翌日から挑戦するもマッコウには出逢っていないようです。

逢えないついでに、もうひとり、昨日船酔いでダウンして何も見えなかった小学生が今日も挑戦するとのこと。
「見えたら起こしたるから、寝とけ」
「起きなかったら、(掌を何度も横に振り、平手打ちのマネ)、こうしたるから」


宇久井の港はたいてい、いつでもこんな感じの雰囲気です。
漁師の人たちはコワモテでも、陽気で子どもみたいな遊び心があります。

出航。
沖はうねり。
今日はやや波が高い。

ひと波来るたびに怖がる小さな子どもたち。
波の向こうに期待をかける人たち。
飛び込みで、乗船した旅の人

今日こそはスクープをという新聞記者
そんな人を眺める私。
いやいや、東船長より先にクジラを見つけたくて、海を眺める私。
やがて、子どもたちは、船酔いでダウン。
船酔いにならないコツは、遠くを眺めること、波を楽しむこと、それから頭を垂れて胃を押さえつけないことでしょう。
後ろ向きに座ると波の揺れがマシになります。
波が高いときには両足をあげてみるのもいいんです。

あの船酔い小学生は、今日は酔ってない様子。
手すりにしがみついて、海を睨みつけいます。
私:「マッコウを見たことある?」
小学生:「うん」
私:「何度も来たの?」
小学生「うん、三回目」
意外でした。
この子は、マッコウ見たさもあるけれど、昨日の船酔いがよほど悔しかったようです。
ハナゴンドウを発見。
船酔いでぐったりした人たちにも生気が戻ってきました。
ハナゴンドウたちは、ちらりちらりと姿を見せます。
東船長:「今日のハナゴンドウは恥ずかしがりですね」
確かに、2〜3回姿を見せると、どこかに消えてしまいました。

手投げ銛の狩人が近くにいるからでしょう。
船に興味深げに近付いてきたら、大変です。
このくらいが、ちょうどいいじゃないでしょうか。

こんなハナゴンドウでも、突きん棒船がいないときには、
船に近付いて遊ぶこともあります。

この日、黒潮を行けども行けどもマッコウは発見できず。
また、マッコウたちはどこかに行ってしまったようです。
広い黒潮の上、僕らの船はほんの入り口の端っこをうろうろしているに過ぎません。
マッコウたちは人間の何倍もの大きさで、地平線のその先のその先まで続いている海がすみか、発見できなかったら「残念!」というしかないでしょう。
紀伊民報の人も、今日でチャレンジは終了とのこと。


今日はトビウオの子どもがよく見えました。
小指より少し小さなトビウオが、ぱっと飛んで行きます。
今年生まれたトビウオたち。

またマッコウはやってくるでしょう。


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